「刀法併用手裏剣術と騎乗戦」
平野傅投剣術の根源は、戦国の騎乗戦闘法にあります。
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武士の拠って立つ所は戦場にあり。武術は武士が武士として世にある限り不可欠の業である。
然るに、雑兵足軽ならばいざ知らず、一廉(ひとかど)の武士ならば馬上に於ける刀槍術の心得は
当然でした。今日の韓国において馬上武術なるものが復元されつつあるが、わが国に於ける馬上
武術といえば、僅か流鏑馬が継承されているのみです。馬上に於ける槍刀の業の伝承は、私の知
る限りでは皆無に近いものです。そうしたことは手裏剣術に於いても然りです。今日、名のある
手裏剣術の流派に於いて、鞍上に居てなす打剣法を継承しているところは皆無という有様でした。
馬上の戦いに於いて槍や刀は、基本的に突くものでは無い!敵も味方も不規則かつ激しく動き回
っているのです。槍や刀で突いた瞬間、急激に彼我の距離が狭まれば、馬の動く力が合成した巨
大な圧力となって手元に返って来ることになります。そうなれば人の力で耐えることは出来きま
せん。後はバランスを失って落馬するだけです。そうなれば、馬蹄に懸けられて死ぬしかありま
せん。戦国時代に於ける馬上の操刀術は、片手撃ちの操刀法が中心でした。兎に角、体重を乗せ
て片手撃ちに叩きつけるのです。両膝で馬腹を締め込むようにして膝下を固定し、両膝をショッ
クアブソーバーのように使って上体のバランスを保つ。刀を打ち下ろすときは鞍上から尻を浮か
し、尻を落とすに合わせて刀を振り下ろすものである。この動作は手裏剣を打剣するに不可欠な
テクニックである。たけり立つ馬は、不規則に、そして激しく足踏みをするものです。騎乗者は、
その度に激しく尻を突き上げられることになります。地に立っていて石を投げることは簡単であ
るが、馬上で石を投げることは極めて困難なことなのです。第一に力がまるで入らない。第二に
石を手に持って投げる構えを取ることが不可能である。構えをとるということは溜を作るという
ことであり、溜を作るということは、体が一瞬固着することである。固着するということは五体
が固まってしまうことを意味し、そうした一瞬時に尻を激しく突き上げられたとしたなら、後は
バランスを失って落馬し果てるしかないのである。馬が疾走するタイミングを計って投擲する以
外、唯一投擲が可能な場合は、馬が静止しているときのみである。いずれにしても、馬上におい
て投擲をするということは、特殊な業を心得ての上の話です。言うまでも無く平野傅投剣術は戦
国の打剣法に依拠して居ります。(軽量剣の使用は言うに及ばず、腰を切る打法や、スナップを使
う打法には不具合が生ずるものとなる)
古くからの手裏剣術として知られる流派に、どうして馬上打剣法が残されていないのでしょうか?
このことに関してご存知よりの方は、是非、教えて下さい。ヨロシクお願いします。
2007.04.29(日)再編集
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