投剣と抜刀術の組型
平野傳の操刀法は、押して斬るでは無く、引いて斬るものでも無い!
只々、物打ちの辺りで以って敵を強打することに専念する技であるが、斬れる斬
れ無いは二次的なものとは言え、物打ちが鋭利な刃物構造である限りは、結果
的に致命的斬撃力を発揮することとなるのである。平野傳にとって撃ち込み稽古
は絶対欠かせないものであり、それは長さ四尺〜六尺ほどの丸太、或いはアケビ
や熊柳などの細木を束ねて垂直に吊るし、それを木太刀を用いて、渾身の力でも
って徹底的に殴ったり突いたりするものなのである。
OG氏の愛刀は備前物大磨上げ無銘、刀身長二尺二寸五分、言うまでも無く本身である。
後藤翁は、古・林崎流を使った。その投剣術と居合い術は精妙に一体化していた。 右入り身構えから合戦拵え真剣で牽制、左手は鯉口を切るのと鞘送りとが同時にな されている。剣を投じた右手はそのまま束へと掛かり、抜刀の動作へと自然に連繋し ていた。そしてそこには寸分の無駄もなく、完全な一つの流れを形成していた。 |